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あらすじ

調略を武器に乱世を生きた一族の熱き闘い。
城攻め×伊東潤 間違いなしの面白さ!
「城をひとつ、お取りすればよろしいか」
小田原城に現れた男は不敵にそう言い放った。
商人に扮して敵地に入り込み、陣中を疑心暗鬼に陥らせ、一気に城を奪い取る――
家伝の調略術で関東の覇者・北条氏を支え続けた影の軍師・大藤一族の五代にわたる闘いと
北条の命運を決する小田原合戦までを描く圧巻のインテリジェンス合戦記!

作者より

戦国時代の合戦は、力と力のぶつかり合いだけではないと思ったのが、この連作短篇シリーズを書き始めたきっかけでした。
「戦う前に勝敗を決めている」というのは武田信玄の代名詞ですが、その教えを守った徳川家康の関ヶ原合戦なども、開戦前の「根回し」で勝敗が決していたと言ってもいいでしょう。

それを考えれば、史実に残らなかったことでも、合戦前の「下ごしらえ」で勝敗を決していた戦があったのではないでしょうか。
『城をひとつ』は、北条氏の江戸城乗っ取り、第一次・第二次国府台合戦、河越合戦、臼井城攻防戦、韮山城攻防戦を、潜入攪乱要員の視点から描いたインテリジェンス漂う戦記物です。

潜入攪乱要員が、馬商人、僧侶、医家、米商人、軍師、農民に化けて敵陣営に潜入し、敵の内部を混乱に陥れる、ないしは味方(北条氏)の思う方向に持っていくという縛りで物語を紡いでいきました。

ただし北条氏の転機となる大戦ばかりを取り上げたので、かなり長期間にわたります。それゆえ一人の主人公では描けず、北条氏の足軽衆頭を任じる大藤一族の五代にわたるクロニクル戦記としました。

大藤一族は謎の一族で、その起源や来歴についはほとんど記録が残っていません。ただ北条家中では重要な役割を占めていたようで、記録上、様々な場面で登場します。彼らが潜入攪乱要員という確証はないのですが、その役割を担ってもらうことにしました。

そういう背景があり、さらに影のような存在である潜入攪乱要員という仕事柄、それぞれの個性というものを極力、描かないようにしました。つまり、あえてキャラ立ちさせていません。この作品のように「キャラを立たせない」小説もあることを、ラノベなどから入った若い読者には知っていただきたいですね。

またこの作品は、2010年頃に構想を練り、2011~2012年にかけて、最初の二作を書きました。その後、版元の新潮社から「先に長編をお願いしたい」というオファーがあり、『死んでたまるか』を連載したため、二年半のインターバルを経て三作目に取り掛かりました。
この時点で執筆済み二作品、構想済み二作品という状態でした。それで再開後に構想済みの二作品を書き、2015年になり、最後の二作品の構想を新たに練ってから書き上げました。

何が言いたいかというと、前の四編は私の初期作品のテイストが色濃く、後ろの二編は最近のテイストが濃いということです。それで多少、違和感を抱かれるかもしれませんが、そのあたりは「面白ければよい」ということでご容赦下さい。

『城をひとつ』は、久しぶりの戦国北条物となりました。戦国ファンのみならず、こうした潜入物がお好きな方には、ぜひお読みいただきたいものです。

書籍データ

単行本: 336ページ
出版社: 新潮社 (2017/3/30)
言語: 日本語
ISBN-10: 4103318538
ISBN-13: 978-4103318538
発売日: 2017/3/30

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