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あらすじ

「法こそ正義」若手弁護士×「掟こそ正義」誇り高き軍人
二人が法廷に立つとき、熱い人間ドラマが生まれる。圧巻の歴史長編!

太平洋戦争中、スマトラ沖で大日本帝国海軍の重巡洋艦が英国商船を撃沈し、捕虜を大量虐殺する事件が起こった。敗戦後、若手弁護士の鮫島は、殺害を指示したとされる五十嵐元中将の戦犯弁護人になる。しかし五十嵐に「死刑を受け入れる」と言われてしまう。それでも減刑を勝ち取るため、鮫島は真相を探っていくと、驚愕の事実が見えてきて──。

作者より

「臭いものには蓋をしろ」という慣用句があるが、日本人にとって先の大戦は、いろいろな意味で蓋をしておきたい悪夢であろう。

しかし日本が侵略戦争をした上(異論があるのは承知だが)、連合国に敗れ去ったのは厳然たる事実だ。

さらに戦犯問題となると、多くの日本人が聞きたくない話のはずだ。そのためか日本人の多くが、BC級戦犯のほとんどが無実の罪を着せられ、連合国軍の恨みを晴らすために処刑されたと思っているのではないだろうか。

しかし最近の調査結果によると、BC級戦犯の何割かは間違いなく戦争犯罪を行っており、彼らが冤罪を主張する論点は「やったか、やらなかったか」ではなく、「上官の命令があったか、なかったか」がほとんどという事実がある。

われわれは、祖父の世代が犯した罪から逃れることはできない。否、逃げてはならないのだ。


今回、私は「小説すばる」初登場になるが、BC級戦犯裁判をめぐる人間模様という極めて重いテーマに取り組むことにした。もちろん実際にあった事件をモチーフにしているが、そこからは逸脱し、今日残されている様々なBC級戦犯のエピソードなども加え、架空の物語として描くことにした。

小説の存在意義は、事実を正確に伝えることよりも、そのエッセンスを凝縮し、物語として提示することで、読者に問題の本質を把握いただくことにあると思う。

それゆえ細部においては実際の事件とは異なる点もあるが、当時の戦犯裁判の雰囲気を伝える上においては、まさしく「史実」に沿ったものと自負している。


私がこの作品を通して伝えたいのは、真実を追求することの大切さであり、結果が望むものにならないと分かっていても、真実を伝えていく努力を怠ってはならないということだ。

ぜひこの機会に、本稿を通してBC級戦犯事件について少しでも知っていただき、その中で繰り広げられた壮絶な人間ドラマと向き合ってほしい。

これも日本人が歩んできた道の一つなのだ。

書籍データ

出版社 ‏ : ‎ 集英社
発売日 ‏ : ‎ 2021/12/17
言語 ‏ : ‎ 日本語
文庫 ‏ : ‎ 448ページ
ISBN-10 ‏ : ‎ 4087443310
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-4087443318

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