あらすじ
沖縄を取り戻せ!
すべてを奪われた戦後の沖縄。
その絶望の中でも前を向いていた男たちがいた。
奄美郡島徳之島出身の東貞吉(ひがしさだよし)は、琉球警察名護警察署に配属になり、
米軍現金輸送車襲撃事件の主犯逮捕の手柄を立て、公安担当になる。
沖縄刑務所暴動で脱獄した人民党の末端、島袋令秀(しまぶくろれいしゅう)に接近し、自分の作業員(スパイ)に育てることに――。
令秀が人民党の瀬長亀次郎(せながかめじろう)に心酔していくなか、貞吉は公安としての職務を全うするために、敬愛する瀬長を裏切ることができるのか。
矛盾と相克に満ちた沖縄で、主人公は自らの道を歩んでいく。
一気読み必至のバイオレンス・ロマン
書籍データ
出版社 : 角川春樹事務所 (2021/7/15) / コルク(電子書籍)
発売日 : 2021/7/15
言語 : 日本語
単行本 : 440ページ
ISBN-10 : 4758413851
ISBN-13 : 978-4758413855
作者より
「沖縄の抱える問題の多くは、本土で生きるわれわれにとって身近なものではありません。
いわゆる他人事になっています。
しかし戦争に巻き込まれて亡くなった沖縄県民は、民間人だけで実に十二万人にも上るのです。
しかも戦争が終わり、ようやく元の生活に戻れると思ったとたん、米軍による土地の強制収用問題が起こります。
これにより多くの農民たちが雀の涙のような価格で土地を取り上げられ、先祖代々の墳墓の地からも追い出されてしまいます。
もちろん沖縄の悲劇は土地問題だけではありません。
米兵や米軍属の強姦事件やひき逃げ事件は今でも起こっていますし、これからも起こるでしょう。
われわれ本土人は、臭い物には蓋をしろのごとく沖縄の基地問題を忘れてしまいがちです。
確かに中国の脅威は切実であり、米軍の存在意義は日増しに高まっています。
私自身、沖縄に米軍基地があるのは仕方がないと思っていますが、そうした政治的考えと史実を知っておくことは別です。
本書を読み、百人に一人でも問題意識を持ってもらい、できれば参考文献をあたり、沖縄の戦後史を知ってもらえたらうれしいです」
(『琉球警察』発売時インタビューより一部抜粋)