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書籍データ

単行本: 309ページ
出版社: 文藝春秋 (2016/6/8)
言語: 日本語
ISBN-10: 4163904670
ISBN-13: 978-4163904672
発売日: 2016/6/8

作者の一言

私は1960年に横浜で生まれました。実は現在も同じ場所に住んでいます。生まれ故郷が好きかと問われれば、何とも答えようがないのですが、とくに引っ越しの必要性もなかったので、流れに任せて住んでいる感じです。
ところが55歳という年齢になり、さすがに昔の横浜が懐かしくなってきました。平成に入ってからの横浜は大きな変貌を遂げ、昔の風景が、どんどんなくなってきたこともあります。
数年前、いつか当時の横浜を舞台にした小説を書いてみたいと思い始めました。1960年代前半の雑然とした横浜の空気を再現したかったのです。それだけ、当時の横浜は不思議な魅力に満ちていました。
その提案を受け入れてくれた版元により、このほど初のミステリーとして本作を上梓することができました。
 これまで歴史小説しか書いてこなかった私としては、新たな挑戦になりましたが、書き始めてみるとスムースに筆が走ったのには驚きました。やはり、よくも悪くも横浜への思いがたまっていたのでしょうね。
とくに今回は、視覚、聴覚、嗅覚、感覚に関する表現を駆使して、1963年の横浜を再現することに力を入れました。「文字の力はバーチャル・リアリティに勝る」ということを唱えてきた私としては、読者に1963年の横浜に行ってもらうことを心掛けました。それゆえ行間には、当時の雰囲気が息づいているはずです。過去の横浜を知っている読者も、知らない読者も、それぞれの横浜を脳内に再現できると思います。
また私は、この作品の中に多くのメッセージを込めました。現在、世界は中国やロシアといった覇権主義国家の台頭によって混迷を深め、これまで以上に日本は、同じ民主主義を国是とする米国と密接な関係を保っていかねばならない時代になりました。だが戦後、日米はどのような関係にあったのか、詳しく知る人がどれだけいるのでしょう。とくに駐留軍と共存してきた日本の庶民が、彼らに対して、どのような感情を抱いていたかについて書かれたものは極めてまれです。そうした巷間に生きた人々の息遣いを再現し、そこから、これからの日米関係はどうあべきかを、読者個々に考えてもらいたいというのも、本書を書く動機になりました。
時代は移り変わっていきます。それだけは止めようがありません。ただ過去を知る者が、少しでもその痕跡を残そうと努力することで、当時の人々も現在を生きるわれわれと変わらず、懸命に生きていたことを伝えられるのではないでしょうか。
伊東潤初のミステリー『横浜1963』を読み、一人でも多くの読者に「当時の横浜に行ってみたい」と思っていただければ、作者としてはこの上ない喜びです。

あらすじ

歴史小説家・伊東潤の新境地、本格社会派ミステリー『横浜1963』

戦後とは何だったのか。
その答えは1963年の日本と米国が混在する街、横浜にあった。
東京オリンピック開催を来年に控え、明るい未来を夢見る日本。
だが、米国との見えない壁は、いまだに存在していた。
戦後の痕跡、すなわち米軍基地や住宅を抱える巨大都市・横浜で起こった殺人事件を通して、日米関係の暗部に焦点を当てつつ、懸命に犯人を追い詰める二人の捜査官の姿を描いたノスタルジック・ミステリー。

物語は、長崎・佐世保と横浜の2つの殺人事件から始まる。
遺体の腹は、いずれもネイビーナイフで切り裂かれていた。
米兵による犯行の可能性が高く、及び腰になる神奈川県警は、「白人にしか見えないハーフの日本人」外事課のソニー沢田に、この事件を担当させ、おざなりの捜査で済まそうとする。
だがソニーは、被害者の人生を垣間見ることで次第に捜査にのめり込んでいく。米軍の協力を仰ぐべく、横須賀基地に出向いたソニーは、日系アメリカ人SP ショーン坂口と出会う。
運命的な出会いを果たした2人が、日米の壁を乗り越え、事件の真相に迫る。
2人の行く手に待っていたのは、驚愕の真実だった。
1963年に連れていかれたあなたは、そこで何を見、何を感じるのか。
『横浜1963』―――― 日本はまだ熱かった。

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