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書籍データ

文 庫: 320ページ
出版社: 講談社
ISBN-10: 4062776065
ISBN-13: 978-4062776066
発売日: 2013/7/12

作者の一言

八年ほど前、関内の有隣堂を散策していると、一冊の本に出会った。それが『太平寺滅亡 鎌倉尼五山秘話』(有隣新書 三山進)であった。
本書は青岳尼という尼僧の生涯を追いつつ、同時進行的に自らの人生の迷いを綴るという、単なる歴史研究本の域を脱した名著であった。

天文三年(1534)、房総里見家で内訌が起こり、北条家の支援を受けた庶家の義尭が嫡流の義豊を滅ぼし、家督を奪った。しかし義尭は、手の平を返すように北条家と絶縁し、北条家の支援する古河公方と対立していた小弓公方・足利義明と結んだ。その同盟の証として、義尭の嫡男・義弘と義明の長女・青岳尼の婚約が発表された。
 ところが、天文六年(1537)の国府台合戦で、北条家の前に小弓公方・里見両勢は敗れ、義明は敗死、小弓公方家は滅亡した。この時、青岳尼は北条家に捕らえられ、鎌倉太平寺の住持に据えられた。
しかし弘治二年(1556)、三浦半島に上陸した里見水軍は、鎌倉まで攻め寄せた。実は、義弘の狙いは鎌倉を占拠することになく、青岳尼の奪還にあった。しかも、青岳尼もそれを望んでいた。その後、二人は手を携えて房総に逃れ、仲睦まじい夫婦となった。

以上が青岳尼伝説である。

この話をベースに、物語の中心を次世代に置き、青岳尼の娘である青蓮尼と、玉縄北条家当主・北条氏舜との悲恋を描いたのが、『戦国鎌倉悲譚 剋』である。

戦国時代の鎌倉という独特の空間を舞台に繰り広げられる相剋の物語を、とくとご賞味あれ。

書評

2011年4月24日 神奈川新聞「かながわの本」欄掲載(単行本版)
「武門か恋かの相克に苦悩」

武人の栄光を選ぶか、それとも恋に生きるか。
戦国時代、小田原北条家の分家である玉縄北条家(鎌倉)の当主として生きた北条氏舜(うじきよ)の相克に満ちた一代記である。
 450年余前、21歳で当主の座に就いた氏舜は、北条家の急速な領土拡大に伴って関東各地を転戦する。
 やがて安房(千葉)の宿敵・里見家から送られてきた美しい尼を浦賀水道の海上で受け取る。その尼を見た瞬間、氏舜は息をのんだ。白磁のように輝く肌。これは「菩薩か」。尼の名は青蓮尼。鎌倉の東慶寺に入って仏道に生きる。
 暴徒の襲撃で、鎌倉が危機に陥った時、救出に駆けつけた氏舜は、ついに尼と結ばれる。「還俗して妻になってほしい」と迫る氏舜に対し、尼は氏舜に出家して仏道に入るよう求める。
 祝言の日、東慶寺に尼を迎えに出向いた時、悲劇が起きた。氏舜は出家し当主を弟に譲った。
 豊臣秀吉の大軍が玉縄衆の立てこもる小田原城前線の山中城をせん滅した。玉縄城をはじめ、小田原城と関東の諸城も風前のともしびに。戦禍から民を救ってほしいと訴える尼に応えて氏舜は立ち上がったが、次の悲劇が。
 史実をベースにした展開は、一気に読ませる。
著者は横浜市出身。

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