あらすじ
奇妙な方法で領国を拡大し続けている大名がいた。信長の「天下布武」とは真逆の「祿壽應穩」や「四公六民」といった旗印を掲げ、民との対話を重視し、その声を聞き入れ、彼らの命と財産を守ってやることで大国にのし上がった北条氏である。戦国時代に北条氏があったからこそ、われわれは人間の「善」や「正義」を信じられるし、あの時代にも民主主義に近い政治形態があったのだと思うと救われる気がする――(本文より)。
本書は、北条五代の中でも傑出した事績を上げ、北条氏を躍進させた三代目北条氏康の生涯を描く。8万の敵を8千の軍勢で破った天才的軍略。江戸の泰平の礎を築いたともいえる理想的内政。その卓抜した手腕は、同時代を生きた上杉謙信、武田信玄が最も恐れたものでもあった。
河越合戦はじめ数々の華々しい合戦はもちろん、「祿壽應穩」「四公六民」といった北条氏の領地統治策にいたるまでを詳述。戦や飢饉によって荒れ果てていた関東の地を、北条氏康がいかに平定し、「王道楽土」を築き上げていったか。その過程が本書で鮮やかに蘇る。
戦国屈指の名将の素顔を生き生きと描き出す意欲作!
【目次より】
●第1章 宗瑞と氏綱
●第2章 若獅子登場
●第3章 三代当主氏康
●第4章 覇者への道
●第5章 関東の覇権
●第6章 氏康最後の戦い
●第7章 滅亡への道
(PHP研究所HPより)
書籍データ
・著者:伊東潤 板嶋恒明
・出版社:PHP研究所
・ISBN:978-4569836768
・発売日:2017/9/16
作者より
「なぜ、氏康なのか」というと、五代の中でも際立った手腕で北条氏を躍進させたのが氏康だからだ。時代背景や周辺諸国のことを考えても、氏康が幸運だったとは言い難く、そうした中で傑出した成果を収めた氏康こそ、五代を代表する人物だった言えるだろう(本文より抜粋)。
本書は板嶋常明氏との共著で、板嶋氏の研究成果を基本としています。私単独の『戦国北条記』とは、できるだけかぶらないようにしています。五代全般を『戦国北条記』で俯瞰してから、こちらの『北条氏康』をお読みいただけると、よりいっそう理解が深まると思います。