51EFV-XL2TL._SX343_BO1,204,203,200_

①第146回直木賞候補作(2011年)

『城を噛ませた男』(光文社)

Amazonで購入
男シリーズ1作目。2010年光文社刊『小説宝石』で不定期連載していたものをまとめた短編集である。
時代は小田原攻め〜関ヶ原の戦いまでをそれぞれ描いており、これまで歴史で、スポットが当たらなかった人物たちが主人公になっている。
表題作『城を噛ませた男』は、NHK大河ドラマ「真田丸」で、
謀略家として際立ったキャラクターで描かれ、さらに有名になった、真田昌幸が主人公。
豊臣秀吉の北条攻めを発端を描いた作品であり、昌幸の戦国の世を生き抜く処世術は、特にビジネスマン必見である。

文芸評論家 縄田一男氏による『城を噛ませた男』の書評は、こちら→http://hon.bunshun.jp/articles/-/4992

61M3pnl5ykL._SX350_BO1,204,203,200_

②第148回直木賞候補作(2013年)

『国を蹴った男』(講談社)

Amazonで購入
男シリーズ2作目。この作品で吉川英治文学新人賞を受賞している。歴史的敗者を描いた作品であり、これもまた、いわゆるマイナーな人物たちの物語である。
表題作『城を噛ませた男』は、今川義元の息子、今川氏真と、彼を支える鞠職人 五助との物語である。
本当に敗者であるのか、そう問いかけてくなる作品である。
伊東さん自身もこう述べている、

ここ数年、「勝ち組」「負け組」という言葉をよく聞きます。価値観が複雑多岐にわたる現代において、「勝ち組」と「負け組」を、そんなにはっきりと色分けできるものでしょうか。
どんな状況であろうが、その立場に置かれた人が、それを「心地よい」と思えば、それで「勝ち組」なのではないでしょうか。

作家 逢坂剛氏による『国を蹴った男』の書評は、こちら→http://book.asahi.com/reviews/reviewer/2013010600018.html

巨鯨の海

③第149回直木賞候補作(2013年)

『巨鯨の海』(光文社)

Amazonで購入
山田風太郎賞、高校生直木賞を受賞している。
伊東さんのストーリーテリング力が光る連作短編集。
江戸時代の紀伊半島の漁村・太地で捕鯨を行う人々の物語であり、江戸末期から明治のかけての組織の変容をだどる歴史物語でもある。
太地では、世界でも稀な組織捕鯨が行われており、
厳格な掟の中で、彼らは生きていた。そこで味わう葛藤は、現代の組織社会に生きる人に刺さるものだ。
伊東さんが言う「歴史は現代の写し鏡である」が非常に分かる作品になっている。
週刊文春による『巨鯨の海』のインタビューは、こちら→
http://shukan.bunshun.jp/articles/-/2730

51UzD+3HF+L._SX343_BO1,204,203,200_

④第150回直木賞候補作(2014年)

『王になろうとした男』(文藝春秋)

Amazonで購入
男シリーズ最終作。今回は信長の家臣団、毛利新助、原田直政、荒木村重、津田信澄、黒人の彌介が主人公。
桶狭間で今川義元の首を取るという大功を挙げたにもかかわらず、その後、歴史の闇の中に消え、再び現れた時は、本能寺の変で壮絶な討ち死にを遂げることになる毛利新助。
明智光秀や羽柴秀吉にも勝る勢いで出頭を重ねたにもかかわらず、本願寺との合戦で討たれた後、様々な不祥事が明るみに出ることで、信長によって歴史の闇に葬られた塙直政。
野心家であるがゆえに墓穴を掘ってしまった荒木村重。 本能寺の変のあおりを食らい、謎の死を遂げた津田信澄。
信長の野心に当てられ、信長になろうとした男・彌介。
「野心とは何か」がテーマになっている作品で、信長によって変えられていったこれらの男たちの人生が描かれている。
伊東さんの戦国短編シリーズの集大成的作品集である。

文芸評論家 島内景二氏による『王になろうとした男』の書評は、こちら→http://hon.bunshun.jp/articles/-/1798

51Ct5WcPqIL._SX339_BO1,204,203,200_

⑤第155回直木賞候補作(2016年)

『天下人の茶』(文藝春秋)

Amazonで購入
茶人・千利休とその弟子達4人、
そして天下人・豊臣秀吉との関わりから「千利休の死、そして千利休そのもの」の謎の真相に迫っていくミステリアスな歴史小説だ。
天下人・秀吉が殺さざるを得なかった千利休とは何者だったのか?
この『天下人の茶』で見たことのなかった利休像、秀吉と利休の関係が明らかになる。
本の話WEBによる『天下人の茶』のインタビューは、こちらhttp://hon.bunshun.jp/articles/-/4992

これを機に、これまでの5作品をぜひ作品を手にとってみてほしい。